今年は、本研究の最終年度である。したがって、ここで本研究の一応のまとめをする必要がある。産業化と都市化との関係は、繰り返し論じられてきた。本テーマはその同じ過程が国民国家の形成にも深くかかわっていたことを証明しようとするものである。19世紀は「歴史の時代」といわれる。そのことは、農民の産業化による都市民化にともなうアイデンティ・ロスを再構築するものであった。ちなみにロンドン、パリ、ベルリン、ウィーンなどで、国家を象徴するような建造物が建設されるようになる。ヨーロッパで国民が形成されたも、こうした過程を通じてである。 このテーマは幸いなことに、偶然、日本社会学会での発表の機会を得ることとなった。昨年、日本社会学会の研究活動委員に任命され、同時にシンポジウムのコーディネーターを委せられた。そこで、シンポジウムのテーマとして「モダニティの思想と都市・環境」を設定することとなった。日本社会学会大会は、11月23日に関西学院大学で開かれた。ここでの「モグニティとアーバニズム」報告を通して、都市化がいかに国民国家の形成に深くかかわっているのかを明らかにした。 さらに平行して、チャンドラーとフォックスの都市人口の歴史的変遷表を参考にしながら、都市入口表を作成した。これにより19世紀の都市化が、長期の歴史からみていかなる位置を占めるのかを一見して明らかになるようにした。
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