近代国家はヨーロッパにおいて、何よりも国民国家として成立した。われわれは国家が国民国家としての性格をもっていることを当然のことと考えている。しかしそれは、わずか100年ないし、150年のことである。本研究は、この国民国家の成立の背後に、都市化を見ようとしたのである。これまで、都市化はもっぱら産業化の視点から、農民の労働者化としてとらえられてきた。 これに対して、本研究はこの都市化がもたらす農民の労働者化の奥底に、アイデンティティを失った農民の国民化への契機を発見することができた。ここに、近代国家が国民国家として立ち上がった理由を見いだしたのである。都市には国家権力を象徴する施設を建設する必要があったのも、実はこのためであったのである。とくに、にロンドン、パリ、ウィーン、ベルリンなど首都には、国民の英雄や国会の議事堂など国家を象徴する巨大な施設を林立させた。この意味で、〈国民国家化〉と〈社会主義化〉とが、農民の「都市民」化にともなうメダルの両面であることを証明するものである。そのことは、欧米諸国に学びながら近代国家への道を歩んでいた日本でも、同じような側面をもっていたことを示唆した。 本研究の成果は、1998年11月23日に関西学院大学で開催された日本社会学会のシンポジウム「モダニティの思想と都市・環境」において、「モダニティとアーバニズム」のタイトルで口頭発表され、現在このシンポジウム全体の記録の出版を模索中である。
|