農業技術の急速な革新と全体社会の急激な構造変化のもとで、農業・農村における女性労働の評価が進みつつある。しかし、女性による労働が家族農業経営の維持、ひいては、日本における農業の維持・再生産につながり得るためには次のような課題の克服が必要である。すなわち、農村女性が家族労働と社会的活動という相互にトレードオフする活動をバランスできるような状況がもたらされることである。本研究は、このバランスとトレードオフの実態を、大規模かつ高度な先鋭的農業経営の構成員である女性を対象とした生活時間調査により把握することを目的として実施した。 平成8年度は、資料収集と既存データの分析の予備的作業の後、農村女性の生活構造を、生活時間、生活行動満足感、生活行動場面の3要素より把握する調査票を設計した。実査は、農閑期としての2月と、農繁期としての6月に実施した。従って、6月調査は、平成9年度に実施した。 平成9年度は、回収したデータの集計分析および、補助的な集中的聞き取り調査を実施した。 以上を総合的に分析し、家事労働・農作業などの家族労働と農村女性のリーダー的存在としての社会的活動の実態と、それぞれの行為がどのような生活行動空間で生起しているか、また、どのような満足感ないしはストレスと対応しているか考察した。
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