大勢の人々が集住し、互いに無関係な状況が卓越する都市はどのような内実を持つのか、わが国の都市についてもこれまでいくつかモノグラフが提示されて来た。この研究はわが国の都市がどのようにして社会であり、どのような社会なのか、人口17万余の北海道帯広市を対象としてモノグラフを描こうとしている。すなわち、社会的諸変動下にある帯広市の社会構造を捉えることを課題とし、その構成要素の一部たる各種の集団ないし組織体の活動内容、構成要素間の関係、地域社会との関係に注目してデータを集積して来た。ここ十数年の間に、世帯と事業所のほか、4千に及ぶ各種集団・組織と、月々5〜7団体が結成されていたこと等を確認した。これら集団・組織をその活動内容に即して分野分類(小分類281)し、基本的データを収録した簡略一覧表および設立年次別一覧表を作成した。その内400団体に質問紙を郵送して172団体から回答を得、また商店街等個別分野に関する面接聞き取りを進め、これら収集データから解説付き一覧を数分野について作成した。また構成要素間関係を取り結ぶ担い手として役職多重就任者に注目し、任意に抽出した173名について考察し、年代とともにつまり活動の蓄積とともに就任役職数の増えること等を確認した。他方、住民一般の意向を知ろうと44世帯に面接聞き取りを行ない、役職者層とは相当に生活世界の異なる人々の存在を確認した。このような作業から、町内会、議員後援会等々、個々の集団・組織を相対化して捉えることが可能となり、数々の知見を得て新たな仮説を設定しつつある。たとえば、実に多種多様な集団・組織が存在することに住民の主体的な取り組みを見る一方で、未だ存在しない類の集団・組織があること、連合会のごとき関係付け組織が結成されにくい分野があること等が判明した。現段階は、モノグラフ作成という目標の三合目へ差しかかった所である。
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