本研究の目的は、晩婚化・少子化・高齢化の人口動向の中で、若い成人子と中年の親との関係に焦点をあてて、世代間関係の実態と、扶養およびケアに関する考え方を調査分析し、これからの世代間関係の方向性と、それに対して選択されうる世代間扶養のシナリオを析出することにある。方法的特徴としては、この問題を歴史的・時代的に把握するために対象の出生コーホートに着目するとともに、若い成人子と中年の親との関係(中期親子関係)は、子育て期の親子関係のあり方(前期親子関係)から影響を受け、また将来の親への扶養や介護のあり方(後期親子関係)に影響を与えるという立場から、親子関係を「過程」としてとらえ生涯にわたる親子関係の変動を視野に置く、ライフコース的な視点を重視している。 本年度は、本研究課題における研究の最終年度にあたっており、したがって大部分の時間は研究成果のとりまとめと出版準備に費やされた。前年度、前々年度に行われた主として30代調査の分析を軸に、それに先だって1991年から実施されてきた20代未婚者調査および40代ベビーブーマー調査の結果もふまえて、「中期親子関係と世代間扶養意識に関するコーホート比較研究」として成果を上梓した。 詳しい内容は成果報告書に譲ることにするが、本研究での際だった知見は、1)都会では、結婚前の離家経験率が低く、未婚者では男女を問わず親との同居率が高い。2)既婚・未婚を問わず、また男女を問わず、お金とサービスの流れは親世代から子世代への方向であり、現時点でほとんど環流はみられない。3)将来の親への扶養意識は男女を問わず総じて高く、また、既未婚、同別居を問わずそれは自分の親に対してである。4)30代が自分の子世代に対してもつ扶養期待は総じて低い。5)中期親子関係で見る限り、ヤングアダルトの親世代に対する依存が顕著である。
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