本研究の目的は、晩婚化・少子化・高齢化の人口動向の中で、若い成人子と中年の親との関係に焦点をあてて、世代間関係の実態と、扶養およびケアに関する考え方を調査分析し、これからの世代間関係の方向性と、それに対して選択されうる世代間扶養のシナリオを析出することにある。方法的特徴としては、この問題を歴史的・時代的に把握するために対象の出生コーホートに着目するとともに、若い成人子と中年の親との関係(中期親子関係)は、子育て期の親子関係のあり方(前期親子関係)から影響を受け、また将来の親への扶養や介護のあり方(後期親子関係)に影響を与えるという立場から、親子関係を「過程」としてとらえ生涯にわたる親子関係の変動を視野に置く、ライフコース的な視点を重視している。これまで、東京都府中市と長野県松本市において、20代-50代、40代、30代の男女計2500サンプルについて大量観察データを蓄積し、あわせてケーススタディ等のフォローアップを行ってきた。本課題研究においては、過去のデータのクリーニングと整理を行うとともに、研究課題にしたがって再度データの分析を試みた。とりわけ本研究では30代(1960年代コーホート)とその親世代(1930年代コーホート)に着目し、ヤングアダルトと親の援助関係および将来の扶養意識についてその成果をまとめた。詳しい内容は成果報告書に譲ることにするが、本研究での際だった知見は、以下の通りである。1)都会では、結婚前の離家経験率が低く、未婚者では男女を問わず親との同居率が高い。2)既婚・未婚を問わず、また男女を問わず、お金とサービスの流れは親世代から子世代への方向であり、現時点でほとんど環流はみられない。3)将来の親への扶養意識は男女場問わず総じて高く、また、既未婚、同別居を問わずそれは自分の親に対してである。4)30代が自分の子世代に対してもつ扶養期待は総じて低い。5)中期親子関係で見る限り、ヤングアダルトの親世代に対する依存が顕著である。
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