メガ・コンペティションの圧力のもとで、従来の日本型企業社会の競争構造は変わりつつある。まず、年功賃金・年功昇進が崩壊してきており、年俸制が普及し、能力主義・成果主義的人事管理が強化され、賃金システムから年功的要素をなくする方向での改革が進んでいる。個人査定の幅が拡大し、年収で数百万の差がつく一方で、ベースアップ額が数千円という賃上げ状況では、労働者の意識を組合へ結集することは難しい。永遠なる運命共同体であった企業社会も、その拠って立つ原理を大きく変え、個人の競争性に全面的依存するメカニズムの構築が図られつつある。 組合幹部へのヒヤリング調査の結果では、職場内の昇進・昇給を中心とする個人間競争に対する労働組合の取り組みについては、昇進・昇給の制度の改定については組合も関与するが、制度の運用による個人の人事評価や査定についてはほとんど組合は関与していない。稀に組合員から昇進・昇給についての苦情が組合に対して寄せられた場合に対応するだけである。職場の競争規制という視点から見るとき、この様な日本の企業別労働組合の現状は大きな課題を抱えているといえる。また現在強まりつつある能力主義・成果主義的傾向につては、組合員の意見は若年者を除けば、一般には否定的であり、生活保証を第一に考える意見が多いとのことであった。さらに企業間競争に対する組合の対応では、ここ数年の春闘にも見られるように、業績に基ずく企業間格差の拡大傾向が見られ、産別組織の取り組みは後退している。強まる競争構造を前にして、労働組合はその存在意義を問われながらも、対応を模索している状況である。
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