本年度は、研究期間の第2年度にあたる。昨年度においては、本テーマにかかる既存の研究分献についての論点整理と、それにともなう行政資料の収集と整理を行ない、後半にいたって、具体的な実証的作業としての愛知県碧南市を中心とする衣浦臨海工業地帯における家族調査については、その地域範囲を、旧碧海群の刈谷市にまで拡大した上で、現在もなお継続中である。当初の計画の調査規模よりも、そのサンプルを縮小し、むしろ質的な調査へと内容を少し変更している。それは、以前の計画段階では、その基礎的な人口動向としては、1990年(平成2年)の国勢調査に基づいていたのだが、その後1995年(平成7年)の新しい国勢調査によって、新しい人口の動きが明らかになってきたことによる。それによれば、従来からの愛知県の中核部分における、とりわけ工業拠点地域の刈谷、豊田、安城、碧南地域に、強い拡大家族志向のあることにおいては変化はないが、その傾向については、碧南市だけではなく、むしろ刈谷市など衣浦工業地帯以外の地域にも拡がり、さらに刈谷市あたりの方が明瞭な特徴が見られるようになっているのである。その点については、地域の「工業化」だけではなく、人口的(移動、出生)要因がふくまれていると考えられ、それについては、周辺的な論議もふまえて別途に提案する必要がある。そうした理由によって、第一年度に計画した労働者家族の調査研究については、少しの変更をともないながら継続している。もう、一つの変更点は、地域的対象によるものではなく、労働者の業種あるいはその質的な拡がりを得ることである。それは、元来、大工業の工場労働者を対象として構想していたのだが、それだけではなく、中小企業労働者とりわけ伝統産業に従事する労働者のあり方について、それがいかなる拘束によって存在しているのか、その雇用先の中小p-n零細企業について調査することである。これについては、サンプルも確定し、郵送調査で第一歩として、探索的調査を行なう予定である。
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