本研究は、当初、障害者の生活と労働の保障をめざして名古屋市南区の一隅で、9名の障害者と2名の指導員で出発した障害者の共同作業所が、4分の1世紀を経過した今日、26の現場で400名をこえる障害者が180名余の職員とともに、「ゆたかな未来をめざして」父母や地域の人々に支えられて働き、生活していることに着目し、その原動力の解明を、地域社会との関わりを切り口として、試みているものである。 とくに従来の名古屋市南部を中心とした事業展開から、地域的にも奥三河の山間部(愛知県北設楽郡設楽町)での福祉村づくりは、障害者も父母もともに高齢化が進行する中で、各施設であらたに提起されつつある諸課題に如何に対応するかへの、ゆたか福祉会としての歴史的な取り組みである。このような取り組みを志向する要因としては障害者・親家族の加齢・高齢化など内的条件の変化と併せて、諸種の聞き取り調査から、ゆたか福祉会をとりまく外的な条件の変化・発展によることも明らかとなった。すなわち設立当初に比べて、地域社会とのつながりが養護学校、町内会、仕事の発注先などに留まらず、行政機関、医療や消費生活協同組合、また労働組合などをとおして、制度的のみならず面的にも広がったことが、事業への取り組みをより発展させたのである。 しかし、本年度は97年夏に着工を予定している、福祉村づくりに対応した実態把握の必要から、当初の予定を拡大して入所者全員と親、家族を対象に「加齢化・高齢化問題実態調査」を実施した。現在調査結果の集計・整理中である。いづれ他の聞き取り調査とあわせて、日本福祉大学研究紀要などへの発表を予定している。
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