本年度は研究助成を受けて3年目になるので、これまでの研究結果を総括する方向で取り組んだ。 一つは、初年度からゆたか福祉会の施設に入所している障害者、親および家族を対象に実施してきた「加齢化・高齢化問題実態調査」の調査結果を踏まえて、入所者の全体状況を掴み、今後の課題を明らかにすることに焦点を絞った。幸い昨年10月、愛知県設楽郡設楽町納庫に、ゆたか福祉会が建設をすすめてきた「設楽福祉村」の1期工事=知的障害者更生施設が完成し、50名の入所者が、新しい生活環境の下で生活をはじめている。それぞれに個室を確保し、家族的な生活の単位を基本としたグループハウスでの日々の生活の営みを通じて、これまで充たされなかった課題が、どのような形で改善の方向にむかい、また障害者の新たなくらしを創りだす契機になるかを明らかにすることは、今後の実証的な研究課題である。現場指導員による入所者のケース検討会もはじまっている。他方、調査結果の入力作業も完了し、データ・ベースとして活用する体制も整ったので、本年度の試行錯誤的研究の積み重ねで、今後、系統的な分析・考察をすすめる準備を、ほぼ完了することが出来た。 今一つは、創設期から「福祉村」建設に至ったゆたか福祉会の発展の経過を、内部的には事業の展開、外部的には地域社会との連携の推移について、今日の時点で問題点を整理して、障害者問題を軸とした協同組合間協同を、地域づくりとの関わりで、総合的に考察をする手がかりを掴むことであった。この件については、その一部を『流通科学大学論集』に研究ノートとしてまとめた。なお以上のほか、協同組合間協同に関わる関係者からの「ききとり」も、2本取りまとめて『日本福祉大学研究紀要』に発表した。
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