1. 社会福祉法人ゆたか福祉会の30年活動を、資料を再整理することによって、障害者の発達保障をめざす取り組みが、それぞれの時期の地域社会とのかかわり方の展開によって、支えられ実質化されていることを再認識した。町内会から協同組合などのより組織的なつながりへの展開と、活動基盤の拡大による障害者の生活基盤の条件整備との相互関連についてである。 2. なかでもゆたか福祉会の創設、およびその後の事業の管理・運営等に尽力した主要メンバーからの「ききとり」や、「設楽福祉村」建設をめぐっての生活協同組合との連携についての「ききとり」は、障害者の基本的人権の確立や労働保障など、本研究の分析視角を定める上で、多くの示唆をえた。 3. ゆたか福祉会傘下の共同作業所および生活施設の入所者全員と、親・家族を対象に「加齢化・高齢化問題実態調査」を実施して、主要項目をデータ・ベースとして入力し、今後も系統的に活用する体制をつくることが出来た。 4. 中山間地域での新たな生活施設や関連施設の開設(=「設楽福祉村」の建設)によって、ゆたかな自然の中での障害者の生活問題の改善や、過疎化のすすむ地域での新たな地域づくりなど研究領域を広げて、研究の中味を豊富にすることができた。具体的にはノーマライゼーションの検討等である。 5. 厚生省、愛知県、名古屋市など行政機関の関連部局や、全国共同作業所連絡会等での資料収集および、他地域の障害者共同作業所の施設見学などを通じて、名古屋でのゆたか福祉会を軸とした、「障害者のゆたかな未来を」目指しての地域づくりの実践例を、ある程度相対化することが出来た。
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