本年度は、長野県諏訪郡原村において、各地区の概要把握とペンション村の全体像の確定、キーパーソン的人物への聴き取りを実施した。並行して、全国の脱都市移住者とペンション・オーナーのデータベース作成、および新規定住の比較研究のため北海道十勝地域と鹿部ロイヤルリゾートにおいて基礎調査を行った。その結果、作業仮説の見直しをするため、本調査は来年度に延期された。 原村では人口は漸増傾向にあるが、その多くは大都市圏からの移住者であることが判明した。事実、顕著な人口増を呈しているのは中央高原、別荘地などの標高が高い地区である。しかし、大都市近郊の混住化地域とは異なり、資源分配をめぐる問題は顕著ではなく、また、諏訪地域6市町村合併構想にしても、新旧両住民に意見格差は見られない。結果、通常ストレンジャーとネイティブとの間にみられる社会的コンフリクトは別に、原村におけるこうした「共生」の要因把握が重要な課題となった。 また、データベース作成は、ペンションはほぼ完成し、移住者全体の分は2月末現在1561人分が入力済である。入力項目は、基本属性に加え、移住動機形成過程・地域との関係・今後の希望などである。これらのデータを分析する過程で、「環境難民」・amenity mover・alternativeculturistという移住者像が抽出された。そしてこの分類に対応する形で、「財の調整」と「動機の理解」の組み合わせから、本研究の主眼であるstrager-native interactionのモデルの一端を形づくることができた。 ただ追加すべき点もある。原村や十勝・鹿部の調査において、「起業家」とも称すべきジャンルがることが発見された。かれらは、剥奪的動機の回復・自己実現的動機の成就という点では同じながら、通常ある「小ささへの志向」とは逆に、実業的成功の場として田舎を見い出す。こうした新たな仮説モデルの作成もまた来年度の重要課題となっている。
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