本研究の主たる目的は、高校生の進路意識を中心とした生活・意識のこの15年間の変容を明らかにすることにあるが、それにネットワークやジェンダーなど、社会学の現代的視点を加えて新しい角度から高校生の生活・意識を検討することも行った。今回は1981年〜1982年に調査した18高校のうち、13高校から調査協力を得ることができ、1997年6月〜7月にかけて集合調査方式で調査を実施し、高校3年生2397サンプルの有効回答を得た。 この調査研究で明らかになった点は、以下の5点にまとめられる。 (1)進路志望や進路意識を比較すると、男子の場合は進路志望に関しても進路意識に関してもこの間に大きな変化はみられないが、女子の場合は、単に4年制大学志望が増加するだけでなく、教養志向から職業志向への変化や、いわゆる「適職」志向の衰退が明確にみられた。それと同時に、男女の進路意識の形成には男らしさ/女らしさというジェンダーハビトゥスが少なからず影響することも確認された。 (2)職業志望には、威信的地位の次元ばかりでなく、独立志向的な(自営業志向的)次元が存在し、アスピレーションの構造はこの2次元において形成されていることが明らかになった。 (3)いわゆる「まじめの崩壊」の典型的な側面として指摘される近代的な職業倫理の衰退は、多様な側面から検討しても明確にはみられなかった。 (4)「重要な他者」ネットワーク(相談相手)に着目すると、男女でその形成過程がかなり異なることが、特に友人関係の取り結び方から明らかになった。 (5)社会意識の側面では、権威主義的伝統主義的な態度が高校生では成人と比較して非常に高く、その後の剥奪的プロセスが今後の研究課題として浮かび上がってきた。
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