本研究の主たる目的は、兵庫県下13高校に在籍する3年生を対象とした調査を1学期末に行い、進路意識を中心とした生活・意識に関するこの15年余りの間(1981年と1997年)の変容を明らかにすることにあった。1981年調査のサンプル数は2180、1997年調査は2397である。 この調査研究で明らかになった点は、以下の6点にまとめられる。 (1)男子では進路意識に関してこの間に大きな変化はみられないが、女子では進路意識のほとんどの側面において変化がみられた。単に四年制大学志望が増加するだけでなく、教養志向から職業志向への変化や、いわゆる「適職」志向(教師・看護婦・事務職など)の衰退が明確にみられた。ただし女子の職業志望の変化は、男子が希望する医師、弁護士などの伝統的な専門職への志向を強めたわけではなく、スポーツインストラクターや放送関係の職業など「新しい」専門職への志望者が増えており、男子との競合関係が強まっているわけではなかった。 (2)それと同時に、男女の進路意識の形成には性別役割意識や男らしさ/女らしさというジェンダーハビトゥスが少なからず影響することも確認された。 (3)職業志望には、威信的地位の次元ばかりでなく、独立志向的(自由業志向的)あるいは技能的な次元が存在し、アスピレーションの構造は複数の次元において形成されていることが明らかになった。 (4)いわゆる「まじめの崩壊」の典型的な側面として指摘される近代的な職業倫理の衰退は、多様な側面から検討しても明確にはみられなかった。 (5)「重要な他者」ネットワーク(相談相手)については、男女でその形成過程が異なり、友人関係に注目すると、女子の方が同一学校の密な関係のもとに形成されることが明らかになった。 (6)社会意識の側面では、権威主義的伝統主義的な態度が高校生では成人と比較して高く、その後の剥奪的プロセスが今後の研究課題として浮かび上がってきた。
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