現代都市における祭礼の持続と変容に関して、理論と実証の両面から研究を試みた。まず理論の面では、ピエール・ブルデュー等の文化的再生産論と都市社会学の下位文化理論の研究を進め、現代都市という変動の激しい空間(場)における祭礼という下位文化の持続と変容の条件とメカニズムについて考察を加えてみた。そこから得られた理論的知見を踏まえて実証も試みた。 以前から継続してきた横浜市の中心地にある日枝神社の例大祭典(通称はお三の宮大祭)の実施過程に関して、平成8年度の夏から秋まで現地での参与調査を続けた。例大祭の社会組織的基盤となる氏子域内の町内会の役員に対する聞き取りを行い、町内会の構造と機能を明らかにした。続いて例大祭りの時に、町内会を基軸とする祭礼委員会の活動と祭礼の実行の過程について参与観察を行った。それによって祭りの運営と経過のダイナミズムの輪郭がほぼ把握することができた。そして調査の成果と理論の結合を試みた。 横浜という日本の代表的国際港湾都市の都心において神社の例大祭(お三の宮大祭)がなぜ持続しているのか、言い換えれば文化的再生産されているのか。その問題に関しては、氏子域内の町内会、氏子たちの商工業者としての実践感覚、職人的技能と技芸に答えを求めることができるように思われる。横浜にはジャズ、映画、演芸などの多様な下位文化か生成-再生産され、祭礼も一つのケースになる。
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