昨年度に引き統き、現代都市における祭礼の持続と変容に関して理論と実証の両面から研究を試みた。理論面では、文化的再生産論と都市社会学の下位文化理論の研究を深め、現代都市において祭礼を支える組織と技能が世代から世代へと受け継がれていく過程を再検討した。また実証面では、横浜の日枝神社例大祭(お三の宮大祭)と神戸の生田神社例大祭(生田祭)に関して、組織と技能の文化的再生産(伝承)という視点から参与観察してデータを集めた。今年度は特に組織と技能の文化的再生産(伝承)に焦点を当てて、文化的再生産(伝承)が成功している都市の祭礼(名古屋地区の半田祭など)の資料も併せて収集してみた。 この他には、今年度は情報化と都市の集団の問題を取り上げ、関連資料を集めたり現地視察を試みた。横浜と神戸の情報化に加えて、現在建設中の関西学術研究都市と播磨科学公園都市の情報化の計画と現実を調べ、都市生活と祭礼に及ぼず影響を再考察した。今すぐに高度情報化により都市の生活様式と集団が大幅に変動することはあり得ないけれども、都市生活の基礎が高度情報化により少しずつ変化していることは間違いない。集団の形態については、伝統的町内会、祭礼組織、行政主導の組織だけでなく、NPOやNGOなどの新しい市民組織が福祉、教育、文化、国際関係などの生活の諸領城に広がりつつある。本研究の視点から見ると祭礼は文化と教育に関わるだけに、祭礼を支える組織も伝統的組織を受け継ぐだけの単純な文化的再生産ではなく、新しい市民組織的形態を取り入れた形式に変わっていくかもしれない。
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