現代都市における祭礼の持続と変容に関して理論と実証の両面から研究を試みた。理論面では、文化的再生産論と都市社会学の下位文化理論の研究を深め、現代都市において祭礼を支える組織と技能が世代から世代へと受け継がれていく過程を再検討した。また実証面では、横浜の日技神社例大祭(お三の宮大祭)と神戸の生田神社例大祭(生田祭)に関して、組織と技能の文化的再生産(伝承)という視点から参与観察してデータを集めた。また、組織と技能の文化的再生産に焦点を当てて、文化的再生産が成功している都市の祭礼(名古屋地区の半田祭など)の資料も併せて収集してみた。これらの理論研究と実証的調査に基づいて、1997年に『横浜お三の宮大祭の社会学的研究-現代都市における祭礼-』(文部省科学研究費補助金による中間報告書)、「横浜お三の宮大祭の文化的再生産」(神戸女学院大学論集)を発表した。 『横浜お三の宮大祭の社会学的研究』は、横浜の日技神社例大祭(お三の宮大祭)の調査結果をまとめたものである。祭礼の歴史と現在の祭礼の社会過程を論文の形でまとめると同時に、多種多様な祭礼の文書資料と写真を集めたもので適当に編集して、、祭礼のダイナミズムを直に感じ取れるように試みた。また、「横浜お三の宮大祭の文化的再生産」は、文化的再生産論の視点から横浜のこの大祭を再検討した理論的な研究成果である。祭礼は人々の組織形成能力と身体技能によって支えられ、実践される。そのような組織形成能力と身体技能は、主に地域社会と家庭における教育と訓練を通じて養成され、上の世代から下の世代へと受け継がれていく。それがまさしく文化的再生産と呼ばれる仕組みであり、論文では横浜お三の宮大祭における文化的再生産の仕組みを解明してみた。
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