三年間の予定で行う研究の初年度に当たる平成8年度は、第一に中高年女性の孫との関係についての先行研究を収集し、祖母の孫育てという伝統的な問題の歴史的変遷と現代の実態について考察を深めることを課題としたその結果、従来、わが国の家族関係の研究は夫婦関係や親子関係に集中してきたが、少子高齢化社会を迎えて、祖父母として生きる期間の長期化に注目して、祖父母と孫の関係に関する研究が徐々に増加していることがわかった。わが国のみならず、アメリカにおいては若い母親の子育て援助者として、祖母の存在が見直され、社会的資源として期待されている。また、男女共働きを原則とする社会である中国においては、一人っ子政策の下で、定年退職後の女性が孫の世話を引き受けることが多く、背景には三歳未満児のための託児所不足があること、開放政策の下における夜間保育や全託(24時間保育)などの減少があることが判明した。祖父と孫、祖母と孫の関係にはかなり差異があることも知ることができた。 第二に以上のような文献および聞き取り調査の結果を踏まえて、中高年女性にとって孫育てと自己の生きがいや自己実現との関係、子ども世代との関係等についての意識調査を実施するための調査項目を検討し、調査票の作成の基礎的作業を行った。
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