1.3年間の研究計画は、(1)トヨタシステム(トヨテイズム)およびそのもとでの労働の特質に関する研究、(2)主として欧米自動車メーカーにおけるトヨタシステムの導入が職場生活に及ぼす影響に関する研究、(3)職場レベルの実態分析と国際比較のための国際労働者調査の解析、の3点であった。 2.(1)に関しては、1996年から翌年にかけて、既存の調査研究のデータを再解読。再整理し、ライン労働における独自の熟練の性格とその企業内形成システムについて重点的に検討し、その成果を「トヨタの職場と企業社会」(『札幌学院大学人文学会紀要』第62号、1998年、235〜258ページ)として発表した。従来の「組織的熟練」仮説をより説得力あるかたちで実証している。 また、1997年度には、この研究と平行して、比較の意味で、国内のある自動車メーカーの経営再建過程におけるトヨタシステムの導入およびサプライヤーの再編成について検討した。この成果は「自動車産業における協力会組織の形成と発展―富士重工業とスバル雄飛会の事例―」(札幌学院大学人文学部社会調査室『調査と社会分析』第2号、1998年、1〜25ページ)として発表した。 3.1998年度から翌年にかけては、上記の(2)について、の日本自動車メーカーの海外現地生産にともなうトヨタシステムの海外移転を中心に検討した。この研究成果は『研究成果報告書』に収録されている。主に既存の文献や資料に依拠したため、職場生活の変容について具体的な分析がなされていない。この点はほとんど手付かずのままとなった上記の(3)の検討とともに、今後の課題として残されることになった。
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