本研究において研究代表者は田中耕太郎教育関係文書、辻田力文書、田中二郎教育関係文書、教刷委、教刷審会議録(第10巻)まで少等々の資料を蒐集した。これらに含まれた教育基本法関係の資料群によって、教育基本法成立過程全体の実態は研究に新たな段階が築かれたと研究代表者は考えている。すなわち、通説がもっぱら当時の田中(耕)文相に焦点を合わせて教育基本方の成立を誤ってきたことに対し、第一に、これに加えて教刷委の南原繁副委員長(後に委員長)の存在が重要であり、彼の折々の発言は立法思想的には、教育基本法立案過程に関与したCI&E教育課の発想に相似していること。第二に田中(耕)文相の意を体して文部省内の立案実務を指導した田中二郎の位置が従来考えられていた以上にきわめて大きいこと。この二点が新たに判明した。 また内容的にいえば、教育基本法の制定方針が憲法改正革案第24条を批判する議論との緊張関係の中で誕生することにも目を向ける必要があるだろう。 なお、研究成果報告書の作成に当たっては、本研究でおに蒐集した資料群のうち、従来未発見であった田中二郎教育関係文書を広く内外の研究者に公開しその利用に供することが急務と考えて、同文章を整理しその目録を作成刊行することに主眼をおいた。
|