国立大学の設置形態については、いまそのあり方が大きな問題となっている。そうした議論を生産的におこなうためには、分析的な基礎を形成することが重要になっている。そのために、本研究は国立大学財政機構について、その現状の問題点と改革の可能性について、基本的な事実を整理し、分析を行うことを目的としたものである。特に以下の三つの視点から作業を行い、その結果をまとめた。 (1)日本の国立大学の財政メカニズムの分析。現在の国立大学の財政機構のマクロ構造と、ミクロ(個別機関)構造、資金のフローを概観し、国立大学の改革が現在、政策的な課題となっていることの社会・経済的な背景などについて整理したうえで、具体的に議論するべき点を整理した。 (2)外国の国公立大学の財政構造との比較。まず特にアメリカの州立大学について、一般的な設置形態の特質を整理したうえで、特にカリフォルニア大学(University of California)とニューヨーク州立大学(State University of New York)の例をとって、その管理運営と財政メカニズムを検討して、日本のそれとの比較をおこなった。また最近のオランダにおける大学改革について分析し、日本の改革への含意を検討した。 (3)現在の国立大学の社会的機能の分析。日本の高等教育において、国立大学が現在果たしている機能を、研究業績の生産、研究者の生産数などの指標を用いて分析した。また財政負担上の社会的公正性の観点から現在の国立大学のあり方を分析した。
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