本年度は、大学教員の生活時間調査の分析、研究活動の編成様式との関連の理論的検討、分析結果のとりまとめを行った。 (1)生活時間調査の分析 昨年度は、大学改革と生活時間の関係に関する分析を行ったので、今年度はさらに管理的職務に焦点を絞って分析し、以下のようなことが明らかになった。 ・管理的業務のほとんどは会議であり、管理的業務が長時間にわたる場合、個人で行う研究活動、授業や教育指導に携わる時間を減らす傾向が見られる。 ・研究とは直接関係のない会議の1カ月当たりの回数が、1回以下の者が23%、4回以上が42%である。 ・会議の回数と会議時間は必ずしも比例しない。また、会議の回数が少ない場合でも、会議時間はそれほど短くははならない。 ・会議の多い者ほど、教育時間、専門的研修の時間、論文執筆時間などの不足感が強い。会議のために研究時間が不足するのは当然であるが、そのために時間の質の低下がみられる。 ・管理的業務、会議などは、大学教員の活動パタン、とくに研究活動に対する影響が大きい。 (2)研究活動の編成様式の理論的検討 科学技術のモード論を参照しつつ、科学技術論のレベルで大学教員の多忙の原因について検討を行った。 知識生産の様式として、ピアレビュー・システム、インハウス・システム、オ-ディション・システムの3タイプが存在することを明らかにした。とくにモード2の出現にともなうオ-ディション・システムの浸透、また多様な研究様式が並存することが、大学教員の多忙の原因になることを示した。 (3)とりまとめと発表 以上の成果の一部を、内外の学会で口頭発表したほか、論文として発表し、最終的に報告書にとりまとめた。
|