平成10年度は、幼児の身体協応性発達の様相を明らかにし、Clumsy Childrenのスクリーニングを目的に、平成9年度に開発したThe Body Coordination Test(以下、幼児版BCTとする)を4歳から6歳の幼児に適用した。この幼児版BCTは、Task-1:後ろ歩き、Task-2:横跳び、Task-3:横移動の3課題で構成されている。対象児の身体協応性能力の評価は、各Taskごとの得点をMQ(Motor Quotient)値に換算する(平均値のまわりに15MQ値を100分割して分散したもの)。さらに、各TaskのMQ値を合計したものをもとにして、Total-MQ値を算出する。このTotal-MQ値が対象児の身体協応性評価の基準となる。すなわち、Total-MQ値0〜70の子どもは障害の疑いあり、Total-MQ値71〜85の子どもは協応性の異常ありというように評価する。 対象児は、東京都、神奈川県、福井県内の幼児676名(男児375名・女児301名)で、上述の幼児版BCTを実施した結果、以下のことが明らかになった。すなわち、すべての課題において、加齢に伴いスコアが上昇する傾向が認められた。これは、学童期における身体協応性の発達に関する先行研究(小林1991)と一致しており、幼児期においてもこれらの機能が年齢とリニアな関係にあることが示された。また、Total-MQ値を用いた評価では、Total-MQ70以下の子どもは全体の1.6%、Total-MQ85以下の子どもを含めると、16.7%の子どもが、運動の機能的な側面で発達援助を必要としている身体協応性の未熟な子どもたち(Clumsy Children)であることが示された。そこで、これらのClumsy Childrenの運動Skillの特性を明らかにするために、Motor Coordination Skill Assessment(平成9年度に開発)を適用し、バランス機能・身体意識・手指機能・協応性の各側面からの分析を行った。
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