3県の計13の様々な療育形態を持つ早期療育施設、および精神科児童外来に通う計801名を対象に、1996年8月および97年3月の2回にわたり調査を実施した。これらの対象に臨床的特徴、愛着に関する12項目の行動の母親による評価、親子の親密度に関するする母親の評価を調べた。昨年度は、第1回目の調査から愛着の項目に影響を与えている因子に関する検討を行った。一般線形モデルによる解析によって、言語能力および診断が愛着形成に有意な影響があると判定された。本年度は、2回の調査で同一の児童に関して調査が可能であった対象365名について検討した。全体的に愛着項目の総計は上昇が見られ、児童の愛着のレベルが進んだことが示されたが、施設間に大きな差があり、逆に低下が認められた施設もあった。言語能力別に2回の比較を行うと、どの言語レベルの児童においても有意な上昇が認められた。療育形態で比較すると、母子通園による療育が単独通園よりも高い有意差を示した。しかし療育形態だけでなく、母親への定期的相談を行っている施設において高い有意差が見られる傾向が示された。親子密接度もほぼ上昇が認められたが、減少が見られる施設もあった。両者とも地域差が見られ、療育システムが整備されていない地域では有意の上昇が見られない傾向が示された。また普通幼稚園、保育園に通う児童は、愛着項目の総計では有意な上昇が見られたが、親子関係の変化の項目では有意な差は見られなかった。子どもの発達的変化、親子関係の変化に関する調査では、ほぼ全施設において良好な変化があったという評価がなされた。このことから、愛着や親子関係のマイナスの変化は、恐らく1回目では過大評価を行ったと考えられた。この様に、療育形態は影響を与えるもののそれだけではなく、母親への支援、療育システムの有無が影響を与えることが示された。
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