研究概要 |
本年度は,3年計画の第2年度にあたる。初年度にひきつづき先行研究ならびに分析の素材となる史・資料の収集と整理をおこなうとともに,具体的な考察に着手している。 当初計画していた三つの機関・組織のうち,とくにマンチェスター・メカニックス・インスティチューションに焦点を絞ることにし,同メカニックス・インスティチューションが企画し開催した親睦的事業,ならびにその事業を先導した代表的人物であるベンジャミン・ヘ-ウッドの生涯と実践についての考察を,進行中である。具体的には,同メカニックス・インスティチューションの『年報』およびヘ-ウッドの『講演記録集』の分析を通して,ここでは成人の教育学習活動と一般教養的・親睦的な催事を結び付けることを企画し実践することで経営上大成功をおさめたこと,しかしこれは成人の自然科学の原理的学習の拠点として構想されたメカニックス・インスティチューションの当初の意図からすれば,経営方針の注目すべき大転換であることが明白になった。このような経営転換は,メカニックス・インスティチューション自身にとって大きな経営成果をもたらしたが,社会的・教育的にいかなる意味をもっていたのかというもう一つの重要な研究課題については,目下検討中である。 この検討課題は,本年度購入した,マンチェスターにおける当時の代表的な新聞『マンチェスター・ガ-ディアン』紙の分析作業を鋭意進めることを通して,考察を深めたいと思う。この分析結果をこれまでの研究成果に加えて『報告書』をまとめ,次年度末までに刊行する予定である。
|