本研究は2カ年にわたる調査研究であり、地方公共団体における大学の設置形態を財源の問題から明らかにすることを目的として行われた。初年度、2年度ともいくつかの大学や都道府県および市の大学担当部局あるいは課に出掛け、資料収集を行うとともに聞き取り調査を行った。またいくつかのアメリカの州立大学の財政状況について資料収集を行った。収集した資料や聞き取り調査の結果を分析して報告書にまとめた。 2カ年の調査研究により得られた結果は主に次のとおりである。すなわち、地方公共団体は地域のニーズ、特に地元の高校生の進学、生涯学習の機会の提供、あるいは地域の活性化のために大学設置、あるいは誘致を強く望んでいる。そのための大学設置の形態としては公立大学の設置、公私協力方式による私立大学の誘致および国立大学の設置や誘致があるが、地方財政の厳しい状況のなかでもっとも活用されているのが私立大学の誘致である。ただし地方公共団体からの多額の出費を伴う私立大学の誘致には法制上、あるいは住民感情の上からも問題があることが見い出された。公立大学の設置は公私協力方式による私立大学の設置に比べて財政的リスクも少なく、地域の多様なニーズを充足しているとの結果が見られた。公立大学については一部事務組合や広域連合による大学も設置されるなどその要望が強いことが見い出された。ただしそうした新しい形態の大学設置については中心となる都市の財政的負担が多く、市町間の予算も煩瑣で複雑であるという運営上の諸問題があり、そうした形態による大学設置も大きな財政上の問題があることが明らかになった。また一般的に公立大学の場合には財源不足の状況にある。かくて地方に大学を設置し、誘致する場合には財源問題が決定的に重要であるとの結論を下した。
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