筆者が現在最も関心をもっているのは、幼児の描画活動に発生する人間表現である。その初期人間表現は、欧文では"Kopffussler"、"te^^<^>tard"、"cephalopods"、"tadpole figure"、"head-feet representation"などと呼ばれ、和文ではそれらを「頭足」、「頭足類」、「頭足人」、「頭足動物」、「頭足人間」、「頭足表現」、「おたまじゃくし」、「オタマジャクシ人」などと翻訳してきた。ここでは、これら一群の用語が示す人間描画の表現形成を「頭足人型」と記述する。頭から直接足が生えたように見えるバリエーションと頭から手足が生えたように見えるバリエーションは頭足人型の典型的なバリエーションと言われている。この二つのタイプは、世界中の幼児が民族、国籍、言語を超えて描くといわれている。 ここでの問題は、幼児の描く頭足人型は、なぜこのような不思議な表現形成になるのか、幼児にとって、頭足人型描出行為とは何を意味するのかである。1887年に公刊されたC.Ricciの著作には、既に頭足人型に関する記述がある。それ以来1世紀以上に亘って、美術教育あるいは幼児教育の研究者はこの問題に取り組んできたが、問題は未解決のままである。筆者は、1990年12月26日からこの問題を考察してきた。ようやく1つの結論に到達したので、1998年3月末までには論文にまとめたい。 上記の研究と平行して、早期幼児期の描画活動から派生すると考えられる幼児文字の書字行為が内言と関連すると指摘できる事例を観察した。その観察結果と考察を研究論文にまとめ発表することができた。
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