研究概要 |
本研究は,戦後になって文部省から国立公文書館に移管された戦前・戦中期の学校文書を調査して,日本における産業教育機関の施設状況の全容を解明することを目的としている。その学校文書とは,(1)学則・規則に関する許認可文書,(2)設置廃止(位置変更・改称)に関する許認可文書,(3)学校台帳の3種から成るぼう大な量の薄冊である。その中から,農業・工業・商業に関する教育機関を抽出して,沿革事情を個別に調査し,戦前期日本における産業教育機関の全体像を明らかにすることに努めた。 さらに加えて,農・工・商の各分野から代表的と思われる高等教育機関と中等教育機関を10校ずつ,合わせて60校を選び,事例研究を進めた。そのため,国立国会図書館や東京大学総合図書館などに所蔵される『学校一覧』や『学校沿革誌』その他の関係資料の収集も同時に行った。 本年度の研究費は主として資料調査のための7回の東京出張の旅費と文献複写費に使用した。現在のところ,資料の収集と整理に追われているが,次年度は,本格的な考察を試みる予定である。日本においては,すでに戦前期において,各種の産業教育機関が整備されていて,世界のトップレベルに到達していたこと,その中には女子の教育機関(職業学校・各種学校を含む)が多数含まれていたことなど,これまでの教育史の通説を越える新事実が明らかになったが,すべては次年度の考察によって結論を導き出したい。
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