研究概要 |
本研究は平成8年から10年度までの3年間計画で実施される。この研究実績の報告は平成8年度の概要である。初年度においては公募制に関する過去の文献を収集する一方,学会や研究会に参加して情報を蓄積した。これらの収集した文献や情報に基づいて、わが国の公募制の分析枠組み,公募制の特徴,公募制と指名制,大学教授市場と公募制の関係,さらにはディシプリンや大学制度の発展過程と公募制との関係について検討した。この成果は「大学人事システムとしての公募制序論」(安田女子大学博士課程発足記念論文集1997年)において理論的に作業仮説を展開した。 本年度の実証的研究の作業過程と研究成果は,上述した作業仮説にしたがって,まず研究代表者が収集してきたA大学教育学部に送付されてきた過去20年間にわたる公募文書を整理した。昭和50年,56年,62年,平成4年の6年間隔で計1200文書について分析を試みた。公募文書の項目について大学所在地,威信,分野,職階,任期,処遇条件,年齢範囲,担当科目,応募資格,期間,締め切り,提出書類等についてアルバイトによるコード化作業を実施し,業者によるパンチ化。それらのデータファイルをSPSSによって統計処理を行った。 初年度は単純集計のみの整理を試みたが,概ね次ぎのような成果が得られた。公募制は次第に普及してきている。個別大学の人事のあり方と公募制は深く関連している。大学教授市場や大学院設置による市場の拡大が公募制を促進している。来年度においてはこれらをさらに分析すると同時に,公募による人材のリクルート過程を追跡する予定である。
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