女性研究者に対する質問紙調査の結果からいえることは、女性研究者の特長として、研修指向の機関に勤務している割合が低いこと、その結果、研究への志向性が男性に比べて弱いこと、実際の学問生産(scientific productivity)の側面での自己評価が厳しくなっていること、様々な支援体制(とくに指導教官、上司、同僚、配偶者などの人的ネットワーク)が助成の研究活動を促進していくうえで欠かせないし、また、女性自身が実際に必要としている重要な要素であることが、明らかになった。 また、研究者として成長する上での重要な項目として、女性は家庭的背景や学校教育、大学院での社会化プロセスを指摘する傾向が強く、男性では「自分の研究費」「研究の支えとなる若手研究者」「独創性を求める科学の規範」などの項目を選択する傾向が強かった。研究者をキャリア経歴型(学歴社会のルールに従って大学院を出て、学位を取り、その教室のテーマの下に研究を進め、研究者として大成していくタイプ)と挫折経歴型(何らかの理由で学歴社会の軌道に乗れず、独自で苦労して研究者の道を切り開いたタイプ)に分けると、女性では後者の占める割合が少なくない。 ガラスの天井という言葉に代表されるように、見えない部分で女性に閉鎖的な体質が研究機関にはある。ジェンダーに敏感な研究機関のあり方を検討することと、日進月歩の科学者世界において、研究から遠ざかることになる出産・育児期の支援サポートをどの様にするべきかという課題が、新たな研究課題として生じてきた。
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