様々な専門的職業への女性の進出が著しいが、大学や民間企業の研究職への女性の進出は必ずしも順調に伸びているとはいえない。平成8年度とへいで居9年度の2年間に行った研究は、(1)カ-ネギ-教育振興財団が主催した「大学教授国際調査」の再分析、(2)大学教授職についている女性の社会化過程及び意識に関する調査、(3)統計データからの科学・技術分野の女性の量的把握、の3点である。カ-ネギ-調査の再分析では、世界の国々と比較して我が国においては、女性の大学人の割合がもっとも低い割合となっていること、我が国においては大学人の性別役割分担意識が強く、理学やテクノロジーの分野に占める女性の割合が極端に少ないことが特徴となっている。反面で女性の被差別意識はそれほど強いとはいえず、職場に対する満足度も高いという矛盾しか結果がみられた。それは、日本の文化自体がジェンダーに関してセンシティブではないからである。 質問紙調査の結果からは、研究指向の研究機関に勤務している女性の割合が少ないことを反映して、研究への志向性が弱いこと、実際の学問生産の側面での自己評価が厳しくなっていること、様々な支援体制(特に指導教官、上司、同僚、配偶者などの人的ネットワーク)が女性の研究活動を促進していくうえで欠かせないし、また、女性自身が実際に必要としている重要な要素であることが明らかになった。研究者として成長するうえでの重要な項目として、女性は家庭的背景や学校教育、大学院での社会化プロセスが重要だと回答する傾向が男性よりも強く、男性は「自分の研究費」「研究の支えとなる若手研究者の存在」「独創性を求める科学の規範」などの項目を選択する割合が高かった。 日本学士院賞87年の歴史をひもとくと705人の受賞者の中でわずか4人でしかない。その意味で、ピラミッドの頂点に近づくほど、女性の割合は低くなる。カラスの天井は、学界という場においても強固に存在している。
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