近年、わが国の学校教育現場では、校内暴力、いじめ、登校拒否等の問題行動が顕著にみられてきた。こうした問題行動に取り組み、解決していくことができる教師の対処行動のあり方の検討が重要となっている。本研究では、まず、教師の実践的な行動や教師文化に関する内外の著書、論文、資料等の分析をすすめた。特に、授業の内外の諸場面での教師の対処の諸特徴や教師の年齢段階や勤務する学校段階による特徴が見出されることの知見を見いだし、論文としてまとめ、これを本研究の作業仮説として設定することができた。平成8年には、小・中学校の現場の授業等の観察を試みながら、まず、児童・生徒の問題行動への教師の対処行勧にみる特徴、文化の特徴を明らかにするために、京都、大阪、広島、福岡の4県の小・中学校校長を対象として(合計1500名)、郵送法による調査を実施した。 平成9年には、生徒の問題行動への対処でより有効な対処能力を発揮していると考えられる小・中学校の生徒指導主事(小学校では、生徒指導部長)の対処行動と意識を明らかにした。京都、大阪、福岡の3県の小・中学校生徒指導主事を対象(合計1200名)とした郵送法による調査実施によって、小学校と中学校という学校段階によって、問題行動の対処と意識に、教師文化の大きな差異が存在することを、実証的に解明した。 さらに、平成10年度には、この生徒指導主事に見られる問題行動への教師の対処行動が、一般の教師との間にどのような差異や共通点が見られるかを、愛媛県松山市の小・中学校教師を対象(合計2000名)に、調査を実施した。これらの調査結果をもとに、教師の年齢や性別、勤務校での生徒指導体制や授業研究体制と関連させながら、生徒指導領域での教師の対処行動の特徴を検討している。
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