平成8年度、アメリカ側文書として、国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP CIE Recordsのマイクロフィルムおよびスタンフォード大学フーバー研究所所蔵のトレーナー文書の中から、研究テーマに関わるものを複製し、重要文書を整理した。日本側文書については、国立教育研究所附属教育図書館所蔵の『戦後教育資料』『辻田力文書』等に当たり、関係資料を収集・複写し、整理した。また、逐次刊行中の教育刷新委員会の会議録の関連箇所を検討し、さらに教育公務員特例法案、国立・公立大学管理法案等を審議した会期の国会の本会議や文部委員会の議事録の該当部分を、国会図書館法令議会資料室を通じて複写し、分析した。 上記の文書の実証的な検討により、1949年に制定された教育公務員特例法における大学教員人事に関する特例の制定経緯をめぐって、文部省、CIE、教育刷新委員会、大学基準協会、大学教授連合など、この問題に関わりをもつ諸団体の改革プランを明らかにし、それらのプランがこれら諸団体の間のいかなるダイナミズムのもとで、教育公務員特例法へと収斂していったのかを解明した。また、GHQの民生局(GS)公務員課長のフーバーが、国家公務員法について教員に関する特例を設けることに非常に消極的であったことを明らかにした。さらに、CIE Records所収の会議報告書を時系列的に分析した結果、占領下の大学管理運営問題をめぐるCIEの施策の流れを明らかにすることができた。 そこで、平成9年度に、教育公務員特例法の成立過程に関して、日本教育行政学会と日本教育制度学会で口頭発表を行い、横浜市立大学の『論叢』と『紀要』に論文としてまとめた。 今後も本テーマに関する研究として、次年度は大学管理制度とのかかわりをふまえつつ、大学管理制度改革の核心であった大学教員の人事制度の改革について検討を進める。
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