国際比較研究から女子大の存在意義を明確化する目的で、96年度の米国ウェルズリ-女子大(Wellesley College)現地調査の結果を分析すると、主な知見は以下のようである。 1.米国では60年に女子大は298校存在したが、70年代には共学化が進みプログラムの修正を余儀なくされた。しかし90年代には、共学が必ずしも男女に等しい結果をもたらさないとの見解も出て、関心が教育形式から内容へと変化、再び女子大の教育が注目されている。現在、3州立大学を含む84の女子大(17%は短大)が存在。共通認識は男女の特性論に基づく教育ではなく、女性のためのエンパワーメント、延いては男性主導の価値観の変更による社会改革の使命にある。2.ウェルズリ-は1875年開学のトップレベルの私立リベラルアーツ女子大。創設者はキリスト教伝道者、ヘンリー・F・デュラント。歴代12代の学長は全員が女性で4人が卒業生。教育目的は社会変革する女性リーダーの育成にあり、モット-は「仕えられるのではなく仕えよ」。特質は(1)専攻分野、性別、人種、宗教、年令の多様化(調和)-共学大学や黒人女子大との単位互換制、MITのBSとのダブル学位取得も可能な相互登録制、65ケ国からの留学生と海外交換留学制による国際性、社会人男女や障害者の受け入れ、世界の諸宗教礼拝サービス、(2)女性問題への関心-女性学講座の他、全分野での女性問題検討、女性研究センターの併設、(3)生涯教育-卒業後(1/3が大学院進学)のサービス、(4)個性の重視-48の専攻分野の他に学生は個人的に新分野の開拓が可能、25名以下の少人数クラス、(5)卒業生との連携によるワシントン夏期インターン制度(労働体験)などにあるが、要するに、女性リーダーを輩出した伝統を活かしつつ、女性や時代のニーズ、別学の弱点にきめ細かく対応、学業面、生活面(全寮制)双方から女性の主体性の育成に使命感をもって地道に取り組んでいる。 97年度は韓国の梨花女子大、98年度は日本女子大を調査、3女子大の比較結果をまとめる。
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