国際比較研究の見地から女子大学の存在意義を明確化する目的で、97年度課題の韓国梨花女子大学(Ewha Womans University)の調査結果を分析すると、主な知見は以下のようである。 1.韓国では1977年に女子大(4年制私立総合女子大学のみ)は13校(日本の高専に近似した国立も含む2年制職業人養成機関である女子専門大学は36校)存在したが、90年代以降は共学校の人気が高まり、且つ私立大学は政府助成が受けられないこともあり経営難から名称を変えて共学化が進んでいる。91年には10校(女子専門大学は20校)に、98年には6校と減少した。2.梨花は1886年開学のトップレベルの私立総合女子大学。創設者はキリスト教メソジスト会派の宣教医の妻、メアリ-・F・スクラントン。歴代11代の学長は全員が女性で、第1代〜第6代は米国人宣教師。第7代(1939年)以降は韓国人で梨花の卒業生。教育目的は女性リーダーの育成。理念は「人間としての女性、祖国を守る働き手」。特質は(1)組織と専門分野の拡大-97年現在、6大学院、14学部(人文科学、音楽、体育、商経、看護、家政科学、自然科学、社会科学、造形芸術、師範、法学、医学、薬学、工学)、62学科から成り、2附属病院、付属校(1幼稚園、1小学校、3中学校、3高等学校)を擁す。(2)理系の重視-生命科学(医学、薬学など)、情報科学に加えて、96年度に世界初の女子工学部を開設。(3)国家と伝統の尊重-音楽学部の国楽、師範学部の保健教育(軍事教練の教師養成。女子は応急手当など)、南北朝鮮統一後の平壌キャンパス構想、「禁婚学則」(学生結婚の禁止)の維持等。(4)国際化の促進-政府助成による国際専門人材養成大学院(国際、通訳、1996〜2000年)の設置、海外10か国52校との交換留学制等。(5)学内奨学制度の強化-優秀な学生確保のための21世紀指導者奨学金等。(6)就業能力教育の強化-「梨花認証制」(経営事務、言語-英語、日本語、コンピュータ)の実施等。(7)女性学の重視-韓国女性研究院の付設、女性学の博士コースの開設等であるが、要するに、女子大として韓国独自かつ国際的な時代のニーズに応えつつも、大規模な総合大学を目指している。 98年度は韓国教育の更なる調査、日本女子大学の調査の後、96年度のウェルズリ-女子大学を含む3女子大学の比較結果をまとめる。
|