国際比較研究の見地から日本・韓国・米国の3女子大学の事例から男女共学が一般化する現状において、女子大学の存在意義や未来戦略を探る目的で、98年度は韓国の女子教育史に関する資料の再収集、および日本女子大学の調査を行った。日本の女子大学および日本女子大学の調査結果を分析すると、主な知見は以下のとおりである。1.日本では1997年度現在、大学総数586校中、女子大学は国立2校、公立5校、私立90校の計97校、女子短大も311校存在する。近年は女子の大学進学希望者が増加し共学が人気が高いが、日本では女子短大の大学昇格が顕著で女子大数は微増している。2.日本女子大学は1901年創立の当初からの組織的総合女子高等教育機関として約百年の歴史をもつ私立総合女子大学のパイオニア。創設者はキリスト教(プロテスタント)元牧師、成瀬仁蔵。歴代10代学長の中6名が女性で卒業生。教育目的は多様な分野から社会改革する女性の育成にあり、教育理念は「信念徹底、自発創生、共同奉仕」。特質は(1)組織と分野の充実化-97年度現在、博士課程までの5大学院研究科、4学部(家政学部、文学部、人間社会学部、理学部)15学科、通信教育部から成り、附属幼稚園、小・中・高等学校を擁す。生活環境科学としての住居学・幼児教育学を含む家政学・理学、社会福祉学等は建学以来の専攻分野の多様性の伝統の特色である、 (2)女性の生涯学習支援とネットワークの国際化の強化-「生涯学習センター」(仮称、2001年開館予定、女性情報・国際交流・地域社会活動支援・マルチメディア教育部門)を建設、既存の通信教育課程および同窓会の国内・海外支部ネットワークを活用し、そこを拠点に各国の女性教育機関、国内の女性支援関連の諸センター、日本女子大学各機構をリンクすることによって男女共同参画社会の形成、女性個人のエンパワーメントに資する構想を持つ。 ウェルズリー女子大学(米国)、梨花女子大学(韓国)、日本女子大学の3事例校の比較の分析結果は、追って報告書を別刷としてまとめる。
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