男女共学を当然視する現代において、女子大学の存在意義や未来戦略を探る目的で、1996年度から1998年度にかけて、日本女子大学(1901年度設立、日本)、梨花女子大学(1910年、韓国)、ウェズリー女子大学(1875年、米国)の3私立女子大学を事例に調査した結果を比較分析すると、主な知見は以下の通りである。1.共通点は、(1)理系重視、女性研究、卒業生との連携などの伝統を生かす姿勢、(2)小人数制の徹底や女性のリーダーシップ能力を伸ばす環境といった女子大学のメリットを生かす、(3)共学大学や海外の大学との単位互換制度を拡大するなど人的・物的デメリットをカバーする、といった教育改革の努力を成し、別学を維持する方針である。2.将来の方向性の差異点は各校独自の伝統に求められ、日本女子大学は自学自動主義、生涯学習を、梨花女子大学はキリスト教主義と韓国の伝統文化を堅持しつつ専攻分野の拡大を、ウェズリー女子大学は女性文化による教養主義を、志向していることである。3.しかし、女性の共学大学への進学率が益々高まると予想される今後、学費の高い私立女子大学は、対価ある優れた教育を行わねば、存続できないであろう。課題は、(1)女子大学がリーダーシップをとり、教育とジェンダーに関する問題提起を実証的に行い、女子大学の存在意義を明確にして社会的合意を得る、(2)国内外の女子大学の連帯、の必要である。これまで女性の分野としてマイナーな存在におかれてきた分野を、男女が共有して担うべき重要な分野と捉え直して男性にも解放する、或いは、男性主導の分野に女性を参入させるためにも、女子大学の使命は終わっていないと思われる。女性問題を認識する質の高い女子大学が多数存在すれば、新たな価値観の創出や社会変革に資するであろう。
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