本研究は、次の3つの基本的課題を検討することをその目的とした。 1.教育方法学・教育心理学・情報科学等の関連分野の視点から、FD活動の理論的体系化を目指すこと。 2.質問紙と面接による調査により、日本の諸大学におけるFD活動を一層促進させるための具体的な目標と、実践的な技法、ならびにそれらに対する阻害要因を明らかにすること。 3.大学における教育活動全般の活性化ならびに教員個人の授業改善に役立たせるためのFDプログラム診断用チェックリストを作成すること。 そこで、FDのワークショップおよび研修会に参加した積極的推進者および実践中の現場教員、約150名を対象に、質問紙法による事前・事後調査を実施した。調査質問紙の内容は、(1)被調査者が最も深く関心を抱いているFD研修の課題とそれらの問題点、(2)彼らの個人的努力を阻害する主な要因、(3)FD実践上の成功と失敗の具体例、(4)それらのFD活動の成果を評価するための基準と方法である。 最初の2項目については評定表を使用し、後の3項については記述式で回答を求め、統計的処理と内容分析とを試みた。その結果、質問紙によるFD研修の事前・事後調査からは、評定値の変動を基にした統計的分析から研修の効果を判定することは非常に困難なことが判明し、自由記述式ないしは非構造的面接法による追跡調査の重要性が改めて指摘された。 最後に、前掲の各領域それぞれについて一組みの質問項目を用意し、教員個人が各自の授業を、また、大学が教育活動全般について自己点検をするための診断用チェックリストを作成した。これらの項目を状況に応じて適切に組合せることにより、そこに描かれるプロフィールの分析を基にして、利用者は教授方法の改善を始めとし、広く大学全体の活性化に資することが期待される。
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