平成8年度は、アメリカにおける19世紀初期の公教育テクノロジーの論理的構造を解明することを目的とした。まず、基本図書や次資料の収集・整理を行いながら、3回の研究会を開催し、毎回2名づつ発表を行いながら理論的構造の解明を行った。 第1回研究会(京都)ではドイツとアメリカの新教育運動における空間上の統制戦略、及びアメリカの学校建築の問題につて、第2回研究会(仙台)ではアメリカの連邦政府と教育官僚制の問題、及び自己愛と博愛の思想的系譜について、第3回研究会(東京)ではアメリカの自己統治のための精神医学、及びペダゴジ-における愛と権力の問題について活発な討論を実施した。これらの研究会では、学校装置システムを支配する規範とコードとして「自己統治」、「愛(慈愛と博愛)」「徳」、「権力」、「教育官僚制」、「ノーマリテイ」などの概念や用語を取り上げ、分析した。この結果、近代の学校(教育)を正当化し、存立させる社会的な規範やコードを重点的に解明することができた。 平成9年度は、こうした研究会を継続させながら、層緻密で具体的な研究を展開させたいと考えている。すなわち、平成8年度の理論的研究を継承しながらも、学校内部の物的装置の配置システム、教室内の教授実践を規定する規律や規範、カリキュラム、学年制、試験制度、斉教授などの登場を理論的、かつ実証的に解明する予定である。これらの研究にも基本的図書や次資料の収集は不可欠であると考えられる。
|