私立学校の独自性を維持しながら、同時に公共的責任を全うし私学の健全な発展を確保することを基本的な視点にして、上記の課題を実現するためにどのような方策が必要であるかを検討するために、本年度はまず全国の私学の管理運営の中核にある学校法人の実態と学校長の意識を明確にする質問紙調査を11月に実施した。調査は全国で約6400ある学校法人のうち、小学校、中学校または高等学校を設置する学校法人(約1100)および当該学校長(約1600名)を対象にした。回収状況は前者が42%、後者が45%であった。 データの解析は現在進行中であるが、私学の独自性について「財政的基盤の安定が必要」と考える理事会が多く、またそのために公費による助成を望む傾向が非常に高かった。また学校にたいする「規制緩和」を求める傾向も数多く認められた点が注目される。 他方、学校長から得られた回答のなかで、私立学校は当然公共性を持っているとの認識が非常に強かった。これからの少子化のなかで私学経営がますます困難になっていくことを懸念しながら、経営の安定を求める傾向は理事会とほぼ同様であった。 これまで全国的規模で私立学校の実態を明らかにした調査がなかったことから、現在集計中のデータが有効性を発揮するものと考えている。次年度はここで得られたデータをさらに克明に分析しながら、他方で欧米諸国で進行中の学校改革の動向を絡ませながら我が国の私学が独自性と公共性を発揮するべき方向を検討したいと考えている。
|