近年、私立学校のあり方をめぐって数々の議論が展開されている。少子化傾向を前提として、私学の経営危機や公私間の協調と競合関係、私学助成の見直しなどがその具体的な内容である。このような中で、私学をどのように捉え、日本の学校教育制度全体の中における私立学校の役割が検討されなければならない。これまで私立学校に関する研究は、私学助成との関連で、その自主性と公共性のあり方が論じられてきたため、ややもすれば法解釈論に傾斜しがちであった。本研究は、小学校、中学校または高等学校を設置する全国の学校法人および学校長を対象に質問紙調査を行い、私学の経営の実態とその設置する学校との関係を明らかにすることを目的としている。 調査およびその結果の検討から、(1)理事会の構成については、設置法人に相当程度の裁量があるため、極めて多様であること、(2)その設置する学校長がすべて理事とはなっていないこと、(3)保護者から理事を選出する法人はごく少数にとどまっていること、(4)学校長は公立学校のカリキュラムを下敷きに、それに若干の上乗せ・工夫を加えることを私学の自主性と考える傾向にあること、(5)学校長には公費助成を望む声が多いが、自主財源に基づく経営を求める意見もある程度存在すること、などが判明した。 これらの結果から、私立学校の経営組織の整備と設置する学校との関係等を明確にするために法の整備が急がれる。また、私立学校に子どもを通わせている保護者が理事となって、学校経営に関する意思表示ができるような措置がとられなければならない。これらの措置を前提として、私学に対する行政的規制を一層緩和することが望まれると思われる。
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