日系人児童生徒の学校教育、とくにかれらに対する日本語教育と母語教育に関する当面する実践課題を以下に示しておきたい。 (1)母語能力に応じた日本語教育第二言語を習得するうえで母語(第一言語)が重要な役割を果たすことを考慮すれば、外国人児童生徒に対して母語能力を無視してやみくもに日本語指導を行うことは避けなければならない。母語の識字能力の不十分な低学年齢児に対しては、母語教育を優先しながら日本語指導を進めることが必要であるし、母語能力が一定程度確立している子どもにはその能力に見合ったレベルの日本語教育を実施することが肝要となる。 (2)教科学習のなかでの日本語教育授業理解に必要な日本語能力の習得には文字学習を中心とする日本語学習だけでは不十分であり、教科学習と統合された日本語教育が必要となる。そのためには、原学級での授業を外国人児童生徒が理解できる内容と日本語で行う工夫や、文字学習に終始しがちな日本語教室での取り出し指導を、教科学習を目的として作成されたカリキュラムや教材を用いた授業へと展開することが必要となる。 (3)母語の保持・伸長を目的とする母語教育子どもの識字能力、認知発達、アイデンテイテイの確立という人間的成長にとって、母語の保持・伸長は不可欠な要件である。それゆえ、母語の学習のみならず、母語による学習(教科学習)は是非とも実現しなければならない課題である。国や自治体はこのような母語教育を実現するための人的条件を整えるべく積極的な取り組みをすべきである。
|