本研究の目的は、日本人男性とフィリピン人女性との国際結婚家庭を研究対象として、異なる文化を持つ夫婦が、それぞれの生まれ育った文化を持寄り、組み合わせて、どのような新しい日常生活文化(食生活、年中行事、親族関係など)を生み出しているのか、それをどのように子供たちに伝えているか、さらに、どのような影響を地域社会に与えているといった問題について、「モザイク文化」という視点から記述分析することである。 本研究では、仙台在住のフィリピン人妻の会の女性たちが中心となって、仙台七夕祭「動く七夕」パレードに参加して演じている「フィリピン・ダンス」に注目し、これは、それ自体が複数の異なる文化要素を組み合わせた「モザイク文化」であると同時に、一つの新たなモザイク片として、仙台七夕祭を「モザイク化」し、さらに仙台と故郷とを結ぶフィリピン人親族ネットワーク文化をも「モザイク化」していることが明らかとなった。 仙台という枠組のなかだけで考えるならば、「フィリピン・ダンス」は、フィリピン人妻たちにとってフィリピン人アイデンティティーの確認とフィリピン文化の呈示という目的のエスニシティの表出と捕らえることもできよう。しかし、それは一面的な把握に留まる。なぜならば、フィリピンと仙台とを結ぶ親族ネットワークの文脈においては、「同じ」ものが、国際結婚家庭というアイデンティティーの表示や日本文化の呈示という目的の二文化性・多文化性の表出でもあるからだ。「同じ」モザイク片が、異なる次元では、異なる意味を持ち、異なる役割を果たしているのである。
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