本年度は初年度であり、研究の重点を本研究の理論的基盤である「他者論」と人種概念を中心に据え理論的研究を進めた。アメリカ合衆国においていかにそれぞれの「人種」概念が社会的に構築され境界が変容を遂げたかについては、「『白人』と『黒人』の間で…日系アメリカ人の自己と他者」(岩波講座文化人類学 『移動の民族誌』収録)で論じた。またアジア人移民の気化権問題に焦点をあげながら人種概念の構築過程を論じたものとして、「アジア人移民の気化権問題と「人種」)(『日米危機の起源と排日移民法』収録予定)、今日国勢調査で一つの人種を成すとされるアジア系の汎エスニシティの形成過程については、「アメリカ合衆国におけるエスニック集団の統合化…汎エスニシティの形成」(『地域統合のフロンティア』収録予定)で論じた。この他にも国際シンポジアムで2回発表したが、"Population Movement in North America"では"Multiculturalism and Citizenship : The Uniting or Disuniting of America"を、"The Diaspora Experiences of Japanese Americans"では"The Nikkei and Japan : The Images and Meanings of Japan for the Nikkei"を発表した。さらに人類・民族合同大会では大シンポジウムで「西欧中心的人種概念の脱構築に向けて」を発表した。
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