昨年度の研究成果と、来年度に向けての問題点を以下にあげる。成果の中でも最も大きかったのは、1997年1月28日から30日まで国立民族学博物館地域研究センターで行われた「中東における国家形成と民族関係」の第1回国際シンポジウムに参加し研究発表を行い、この問題に様々な角度から取り組んでいる内外の研究者と情報交換できたことである。特に本研究の対象であるチュニジアのジェルバ島からのイスラエルへの移民コミュニティを研究対象としているイスラエルの文化人類学者と知己を得、イスラエル側からの視点を開けたことは意義があり、今後の研究の発展と示唆となった。 問題点も、この国際的な情報交換に関連する。チュニジアを始め中東諸国の多くではまだ通信状況が不安定で、色々試してみても安定した通信は困難な状況にある。イスラエルが唯一の例外であると言う現況は急には改善されないだろう。研究情報の国際格差を乗り越えるためには、やはり度々現地調査に赴く以外に当面の解決方法は無い。しかし現地に限らず、日本においても情報状況はまだ閉鎖的で、海外の研究動向と時差がある。特に民族問題やマイノリティ問題の研究者の層は薄いので、孤立し独善的になりがちである。この弊害を避けるためには、今後も海外の研究者との時差をおかない情報交換が重要であり続けよう。来年度は、この点の進展を図り、現地及び欧米の研究者達との不断の情報交換に積極的に取り組み、日本の研究者側からもマイノリティ研究に対する発信を行えるようにしたい。
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