二年間にわたる本研究では、文献による理論的検討とともに、(1)福江祭、(2)仁尾雨乞い竜、(3)和太鼓グループ、(4)地方博覧会市町村催事、(5)白鳥おどりと、それぞれに関係する民俗芸能や郷土芸能の調査を行い、民俗文化が本来の文脈をはずれて見出される「フォークロリズム」の現象についての理解を試みた。(1)では、福江祭の資料収集と参予観察調査を通じて、「青森ねぶた」がイベント型の祭りに移植される過程を把握することができたが、収集したデータの整理と分析になお時間を要する見込みである。(2)の調査では、第二次大戦前に一度だけ行われた大がかりな雨乞い行事と、ながく地域に伝承されてきた雨乞い習俗を原型とする「雨乞い竜」が、瀬戸大橋架橋記念博覧会を契機に町おこしイベントの主役として再生される過程を明らかにすることができ、その成果の一部は論文「雨乞い竜の再生」として発表した。(3)では、各地の和太鼓が地域の郷土芸能としての役割を獲得してゆく過程と、伝統ある民俗芸能が文化財行政に組み込まれていく過程とが、ともに現代の「地域文化」の創出されゆく過程に他ならないことを明らかにすることができ、その成果の一部は論文「郷土芸能としての和太鼓」として発表した。(4)では、和太鼓グループが地方博覧会市町村催事の主要演目として処遇される現状を中心にすえつつ、さまざまな民俗芸能・郷土芸能が地方博覧会市町村催事に果たす役割について検討を加え、とくにぎふ中部未来博覧会に関わる成果は論文「祭りと踊りの地域文化」として発表した。(5)については、群上踊りに比較して後発といえる白鳥町の盆踊りイベントが、観光資源として定着する過程に関心を深めることができた。しかし資料収集や現地調査は着手したばかりの段階にあり、研究の継続が必要とされる。
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