本年度は、1)兵庫・岡山両県における既往の供養塔調査の確認、2)現地調査、3)六十六部に関する研究論文の収集を行った。 1)両県内での近世の石造物調査実施の有無、調査が実施されている場合の資料の公開など調査状況を確認するため、両県内の各自治体教育委員会に対してアンケート調査を行った。兵庫県では90余の自治体にアンケートを配布し、約6割の回答を得た。そのうち姫路市、養父郡・美方郡・神崎郡などで石造物調査が実施され、調査結果中に六十六部供養塔を確認できた。岡山県では80余の自治体にアンケートを配布し、約7割の回答を得た。そのうち岡山市・総社市・勝田郡・英田郡の各自治体で石造物調査が行われ、調査結果の中に六十六部供養塔を確認できた。 2)岡山県津山市周辺を一事例として現地調査を実施し、主要街道沿いに六十六部供養塔が多く建立され、街道沿いには六十六部行者の設けた庵室を認めた。六十六部供養塔の設置場所を考える上で示唆に富むものであった。 3)六十六部に関する研究論文の収集は、国立国会図書館や兵庫県立図書館、岡山県総合文化センターなどにおいて行った。 以上、研究を推進してきたが、問題点や課題も多い。既往の石造物調査は、六十六部供養塔の所在確認には有益であるが、寄進者名の省略、主文言の不明確さなど、現地で再確認しなければならない点もみられた。来年度は可能な限り現地調査を実施し、不明な点を解明してより正確な資料を得るとともに、資料のデータベース化にむけて研究を進めたい。
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