1.「帝皇系図」・「種子島家譜」等、日本中世に作成された一族系図(家系図ではない)の収集につとめ、その形態的特徴を考察。以下の知見を得た。 (1)横系図の場合、系線の引き方は右に主軸をおくことが多く、また主軸から左へクランクして横系線が伸びる。また、横系線より人名を釣る縦系線が不明確である。 (2)縦に3〜4世代を列記することが多く、1世代のみ記して次世代を左へ改行する近世的様式と明確に違いがある。 (3)開祖の次世代には女子の記載が多いが、以降においては女子の記載が少ない(その理由の一つは、女系の子孫をも擬制的同族として把握し一族結合を高めるためであろう。だが、それだけでは説明できない事例もあり、このような現象が表現する「(系図の)歴史物語」を個別に解明することが次の課題となる)。 2.また、近世初頭に成立した系図集を分析することにより、さかのぼって中世系図を復元する試みを行った。そのため、『浅羽本系図』『諸家系図纂』『諸士系図』等のマイクロフィルムを購入。その形態・記載項目・原拠等についてデータを集め、当該期、系図の保持・収集にあたった系図家の存在に着目しつつ検討すると、近世初頭においてはいまだイデオロギーないし「歴史」研究による加筆が乏しく、比較的原状に忠実な模写を行ったと推定するに至った。したがって、中世系図の形態的特徴の明らかなもの、あるいはその遺香の感じられる系図をピックアップすることが可能となった。
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