1 植民地における治安維持法に関わる基礎的資料を調査・収集した。 前年度に続いて、基礎的資料として新聞記事の収集に努めた。本年度は朝鮮語紙『朝鮮日報』および日本語紙『大阪毎日新聞・朝鮮版』を中心として記事を検索・収集した。 2 日本在住の植民地出身者に対する治安維持法適用に関する資料を調査・収集した。 (1)国立公文書館所蔵の『公文類聚』から関係資料を収集した。 (2)日本在住の朝鮮人・台湾人に対する保護観察処分・予防拘禁処分に関わる資料の収集に力点を置き、『保護時報』(財団法人輔成会発行)、『教誨研究』(刑務教誨事業研究所発行、のち『教誨と保護』刑務教誨司法保護事業研究所発行)、『司法保護月報』(司法大臣官房保護課発行)などの雑誌を通覧し、関係記事を収集した。これらの雑誌には、植民地であった朝鮮や台湾における保護観察処分の状況を記した記事も多く掲載されている。また、『台湾刑務月報』(台湾刑務協会発行)、『法曹雑誌』(満州国法曹会発行)などの雑誌からも関係記事・論説を収集した。 3 上記のような資料から、治安維持法にもとずく保護観察処分・予防拘禁処分が実施されるに当たって、植民地出身者に対する思想的転向の問題が重視されたこと、そのために司法当局などにおいて特別の取扱いがなされたと考えられることなどが明らかになった。また、保護観察処分を受けた在日朝鮮人のリストもこれらの資料から作成できた。しかし、資料収集がまだ充分でないこと、分析に時間がかかることなどの理由から、論文を執筆するには至らなかった。
|