明清交替期における琉球国の対中国朝貢貿易の研究は、琉球国と中国との関係史の中ではきわめて重要な分野でありながら、これまで他の領域と対比したとき、この分野の研究は大いに遅れているのが現状である。その理由は中国王朝(明・清)の興亡と交替という複雑な時代に、当時の琉球が何れの王朝に帰属するかの二者択一を逼られていたことから、それに関する正確な資料があまり遺されていないことに原因していた。この分野の解明には根強く関係資料の発掘収集に努めることが何よりも重要である。そのため今年度は意欲的に各地の研究機関を訪れて資料の発掘に努力したが、その結果、鹿児島の木脇家に所蔵されている「肥後守祐昌様琉球御渡海日記」の貴重資料を調査収集することが出来た。その他福岡県行橋市の同県立豊津高等学校(育徳館)に関連琉球資料があることが分かり、次年度再調査することを計画している。以上のように、今年度は研究計画書に明記したように九州地区(九大文化史研究施設、同図書館、長崎県立図書館、鹿児島県の各機関)と関西地区(京大図書館、天理大学図書館、大阪市史編集室等々)を中心としてその他山口県立文書館などを訪れて貴重資料の発掘収集を行うなどきわめて有意義であった。次年度はこれらの研究機関以外の各地の機関や旧家および各寺社などへの調査を予定している。そしてここに発掘した資料に基づいて必ずや新しい研究成果が出せるよう努めたいと考えている。
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